○ はじめに

 植林や木材の生産・流通、木材の利用、森林空間の利用を一つのサイクルとして見る「森林の循環利用」すなわち持続的な森林経営は、SDGs などに代表される環境問題を解決するための重要な指標ですが、そのサイクルを軌道に載せるためには多くのコストが掛かります。そこで、利用したいのがJクレジットです。Jクレジットとは、日本において認証された温室効果ガス削減量を計測し、取引可能なクレジットのことで、企業や団体が自発的に温室効果ガス排出量を削減することによって取得・販売し、森林運営のコストを補填するとともに排出削減の実績を示すことができる画期的な制度です。Jクレジットは経済産業省・環境省および農林水産省が推奨する制度であり、利用することでクレジットの売却益で事業コストを低減させるだけでなく、地球温暖化対策への取り組みに対するPR効果や、Jクレジットを通じたネットワーク構築など、多数のメリットがあります。例えば、ある商品の売上の一部でJクレジットを購入すると、商品が間接的に環境保全活動に寄与するような図式を作ることができます。

 この記事では、Jクレジットを利用した持続的な森林経営の計画の建て方や、ICTを利用した現代のスマート林業について解説します。

○ 施業する森林を探し、経営計画を立てる

1. 現状調査

 まず、対象となる森林の現状調査をします。具体的には、森林の種類、面積、樹木の種類や密度、林床の植生、地形、水源などを調査する必要があります。スマート林業と呼ばれる ICT を活用した最新の林業システムでは、ドローンを活用した測量レーザ計測により情報を取得したり、生産管理や生産情報、伐採・加工時の経費削減、そして効率的な運送計画などを一括で調査することができます。このデータを元に、どの場所でどの程度の木を伐採すると森林全体にどのような影響が出るかを予測しながら、適切な森林経営の計画を立てることが可能です。森林管理には植生や水源だけでなく、森林を基点とする生態系にも気を配る必要があり、それも含めて環境保全には重々配慮した施業計画を立てなければなりません。

2. Jクレジットの創出

 調査結果を元に、Jクレジットの観点からどのような CO2 削減効果が見込めるかを算出します。間伐で森林を整備し、CO2 吸収量を増やすことでもJクレジットは発生しますし、森林経営のあらゆる工程において、バイオマス燃料の利用や空調設備の見直しなど、様々な手法で CO2 量を削減することが可能です。Jクレジットを創出することができたら、定められた手順でそれを販売することで経営計画のための資金を確保することができます。

3. 計画の実施とモニタリング

 施業計画を実施したあとは、その成果をモニタリングすることが必要です。Jクレジット自体も定量的な計測により持続的に CO2 が削減できているかを確認することはできますが、森林経営的にもきちんと想定したサイクルが循環しているか、森林の生態系が乱れていないかを常に確認しなければなりません。このモニタリング業務まで含めて、持続的な森林経営と初めて表現できます。

○ 森林経営におけるCO2排出量削減・吸収の取り組み

 森林経営において、CO2 排出量削減・吸収の手段は多数存在します。そのいくつかを紹介します。

1. 適切な森林管理

 適切な森林経営計画に基づき、間伐・植林を行うことによって森林が正しく CO2 を吸収できるようになります。これらは、造林・植栽・保育・間伐面積に対し林齢や林齢に対応する幹材積成長量を乗じ、吸収量を算定する他、木材として出荷する際も CO2 の永続性残存率を計算し、製品中に固定する吸収量を算定することでそれも CO2 削減効果として認められます。

2. 電動機械や車両、設備などへの再生可能エネルギー導入

 林業には多くの電動式機械・車両が導入されていますが、ガソリンエンジンからバイオマス固形燃料(木質バイオマス)による化石燃料や、再生可能エネルギー系統電力で代替することにより、それら間接的な CO2 削減も削減量として申請可能です。また、どうしても代替できないものでも、従来より省エネなもの、高効率なものを利用したり、工夫して運転・業務時間を短縮することにより、稼働時間を減らして CO2 削減効果を得ることができます。こちらもすべて厳密に算出されモニタリングすることで、Jクレジットとして申請が可能です。

○ まとめ

 以上、森林経営において重要となる指標・計測やJクレジット獲得のための CO2 削減例について解説しました。Jクレジットをうまく活用することにより、コスト面の負担を補いながら持続可能な森林経営を施業することができます。制度をうまく活用し、地球環境に優しい林業を実現しましょう。

持続可能な森林経営のため、森林整備でJクレジットを創出する方法
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