企業版ふるさと納税(正式名称:地方創生応援税制)は、企業が自治体に寄付を行い、税負担が軽減される制度です。寄付は地方創生事業に活用され、地域活性化に活用されます。従来でも企業による自治体への寄付金は3割が損金として算入できていましたが、企業版ふるさと納税を活用することにより新たに寄付額の6割が別途控除され、合わせて9割もの税負担が軽減されるようになりました。
上手く活用することで税負担の軽減だけでなく、地域活性化も支援することができる企業版ふるさと納税について詳しく解説します。
○ 企業版ふるさと納税の仕組み
企業版ふるさと納税では、自治体の地域事業(まち・ひと・しごと創生寄附活用事業)に対して寄付を行うことにより、その最大9割が税負担軽減(3割が損金、6割が控除)となります。自治体は地方創生に関わる事業で企業から支援を受けることができ、企業は本来税金として支払われる資金を使って社会貢献やPR/CSR活動を行うことができるため、相互に一定の利益を得る制度です。企業としては、創業地やゆかりのある地域を応援するだけでなく、自治体との連携を強化してパートナーシップを構築し、地域との密接なやり取りによって事業展開へと繋げたり、CSR活動・SDGsへの取組の一環として活用することが可能です。個人版ふるさと納税の名目と同じように、本来一律支払われる法人税を自分たちの理念や目的に沿った活用ができるという点も大きな利点となります。一方で、個人版ふるさと納税と違って、返礼品のようなものはなく、経済的な利益を受け取ることは制度で禁止されています。また、ふるさと納税額には上限がある他、下限として10万円が定められています。なお、本社所在地の自治体への寄付はできませんので、あくまで創業地が離れている場合やゆかりの地、支部所在地などへの支援が基本となります。令和3年度のデータでは3,098企業が企業版ふるさと納税を活用しており、この数字は制度の認知と共に年々増加しています。活用企業も大企業だけでなく、中小企業、メーカー、銀行、建設業など幅広い業態・業種に渡ります。
○ 企業版ふるさと納税の対象となる事業
実際に企業版ふるさと納税の対象となる事業は、地方公共団体によって立案された「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」となります。これらは主に地域活性・地域再生・地方創生・人口減少防止などといった目的を持っている必要があり、事業計画を内閣府に提出した後、内閣府によって認定・公表される必要があります。実際に当該事業に寄付を行ってふるさと納税の対象となるためには、内閣府に公表された事業一覧を見て企業側から打診するか、企画立案時に地方公共団体側から企業に相談するといった流れが想定されています。また、企業版ふるさと納税マッチングサービスなどの企業と地域事業を結びつけるサービスを用いることで、より企業の目的と事業内容に寄り添ったマッチングを期待することも可能です。具体的な事業内容としては、再エネ電力やCO2のリサイクルを地域事業として導入したゼロカーボンプロジェクトや、子育て支援や雇用対策を主眼に置いた「しごと創生」事業、林業を絡めたSDGsプロジェクトなどが挙げられます。また、公園整備や里山再生など、地域に根付いた環境整備事業のような見えやすい事業や、新たな地元の名産や地域資源の保護など、企業ゆかりの地であれば支援したくなるようなプロジェクトも人気があります。
○ 企業版ふるさと納税のマッチングについて
企業版ふるさと納税では、企業側・地方創生事業それぞれが膨大な数となるため、マッチングにおけるサポートやアドバイザー制度を活用することが推奨されています。
マッチングサポートでは、企業と自治体を結びつけるためのプラットフォームや、ポータルサイトなどが存在します。いくつかの個人版ふるさと納税で人気のサイトも企業版ふるさと納税専用のポータルサイトを用意していることがあります。これらのサービスではプロジェクトのマッチングだけでなく、プロモーションや企業勧誘の戦略策定、アドバイスなどが盛り込まれていることがあり、これらを活用することでより効果的な制度活用を狙うことができます。
また、内閣府は、地方公共団体と企業のマッチングを促進し、企業版ふるさと納税のさらなる活用を目指すために、「内閣府企業版ふるさと納税マッチング・アドバイザー」制度を設立しています。この制度のもと、3名のアドバイザーが任命され、地方創生SDGs官民連携プラットフォーム「企業版ふるさと納税分科会」などで、地方公共団体と企業の実務担当者に対して、地方公共団体の訴求内容・方法や企業の提案内容に関する助言を行っています。更に、企業と地方公共団体のマッチングを進めるために、マッチング会を開催する地方公共団体にアドバイザーを派遣しています。任命されたアドバイザーはいずれもマッチングにおける相当の経験を有しており、企業版ふるさと納税を活用するための大いな助けとなります。
○ まとめ
企業版ふるさと納税は、企業と自治体が協力して地域活性化や地方創生を支援する魅力的な制度であり、税負担を軽減しながら、社会貢献やPR/CSR活動に役立てることができます。さまざまなプロジェクトが対象となり、地域に根ざした取り組みを行うことが可能です。また、マッチングサポートやアドバイザー制度を活用することで、企業と地方公共団体が効果的に連携し、制度の活用がさらに促進されます。ぜひ、企業版ふるさと納税を活用し、地域と共に成長していく新たな取り組みにチャレンジしてみてください。