企業版ふるさと納税は、国が認定した地方公共団体の地方創生プロジェクトへの寄付が税額控除される制度で、2016年に開始されました。2020年4月1日からは、税額控除が最大9割まで拡大され、企業は実質1割の負担で自治体に寄付できるようになっています。
この制度に対する企業側の認知度や、活用している企業の傾向、また活用が進まないケースの課題などを2020年に実施されたアンケートをベースとして紹介します。なお、アンケートはインターネット調査で行われており、従業員数が300人以上、かつ企業版ふるさと納税について最終決済権の立場にある人間にのみ実施されているため、比較的信頼度の高い調査内容となります。
○ 企業版ふるさと納税制度の認知度と利用意向
企業版ふるさと納税制度の認知度は、「知っていた」「なんとなく知っていた」を合計すると約8割となりましたが、2020年4月の改正内容について理解している企業は約5割にとどまっています。改正後、実質的に1割負担で企業版ふるさと納税制度を利用できるようになると説明した場合、利用意向は「利用したい」「利用を検討したい」を合わせて56.7%、「未定だが興味はある」を合わせれば79.8%と、高い関心を示しています。その際、企業側の認識するメリットは「地方自治体との関係構築」と答えた人が最も多く、次いで「SDGsなどブランディングの一環」と回答されました。
その一方で、10,000人以上の従業員を擁する会社の場合、75%が利用したい・利用を検討するとの利用意向を示しており、全体平均の56.7%と比較すると有為に前向きな姿勢を示しています。また、地方創生事業への興味に関しては10,000人以上の会社の6割が「興味がある」と回答しており、大企業ほど地方創生事業やそれを介したSDGs、ブランディングなどの活動に積極的という結果が出ています。
○ プロジェクトの「社会的意義」の訴求が鍵
企業版ふるさと納税で寄付先の自治体を選ぶ際の基準については、半分がプロジェクトの社会的意義と回答しています。自治体が企業から寄付を募りたい場合、社会問題の解決や社会的な目標、例えば森林整備やバイオマス燃料によるCO2排出量の削減などがSDGsが話題になっている今、共感を集めやすいものとなっています。また、地方創生事業に取り組むことが自社の事業・サービスのちメイド向上や、売上・利益の拡大に繋がると思っているかを尋ねたアンケートでは80%が前向きに回答しており、サービス・商品に絡めた販売戦略に有効であるとの認識が大多数です。
○ 人気のあるプロジェクトジャンルは「環境保全」
企業版ふるさと納税で寄付したいプロジェクトジャンルについてのアンケートでは、半数以上の企業が「環境保全」と回答しました。製造業を始めとした生産活動を中心とする企業にとっては環境問題は喫緊の課題であり、社会的責任を感じやすい領域であることが伺えます。例えば製造過程で排出するCO2総量を減らす場合、大きな人的コスト、金銭コスト、そして時間が掛かりますが、地方創生事業を利用したカーボンオフセットでは金銭コストのみですぐ実質CO2排出量を低減させることができ、企業活動が顧客や投資家、株主に理解が得られやすいというメリットがあります。
また、次いで災害や子供の教育、雇用促進といった回答が見られ、循環型森林経営のような、町全体をあげて環境保全を中心としたサイクルを促進するようなプロジェクトの人気が高まる傾向にあります。
○ 改正後も利用意向のない企業に関する課題
また、アンケートでは制度改正後も企業版ふるさと納税を利用しない、利用したいが難しいと回答したおよそ1割を対象に、その理由についてアンケートを実施しています。それによると、37%が「メリットを感じられない」、24%が「プロジェクトに魅力を感じられない」という回答になりました。一方で「利用したくても資金的余裕がない」と回答した割合は8.7%にとどまり、今後の事業プロジェクトでより共感を得られるプロジェクトがあれば、現在利用していない会社も利用する可能性が示されています。また、15%が「自治体のプロジェクト内容が分かりにくい」としており、これはウェブサイトでの表示の改善や、プロジェクト内容の煩雑さを見直すことで改善される可能性があります。
○ まとめ
以上、企業版ふるさと納税に関する企業側の認知・意向に関するアンケートの結果を元に、その傾向と考察を紹介しました。いくつかの課題感は残るものの、ほとんどの企業が企業版ふるさと納税や地方創生事業に対する前向きな意向を示しており、今後ますます注目度の高まる制度となっていくことでしょう。
なお、アンケート結果の詳しいデータについてはトラストバンクのPRをご参照ください。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000526.000026811.html