企業版ふるさと納税(正式名称:地方創生応援税制)は、企業が自治体の地方創生事業に寄付を行うことで、通常の寄付より多くの税金が控除される制度です。寄付の効率的活用だけでなく、社会貢献やPR/CSR活動を行うことができるため、相互にとってメリットがある魅力的な制度です。ここでは、企業版ふるさと納税のメリット・デメリットについて詳しく解説します。

○ 企業版ふるさと納税のメリット

1. 税負担の軽減:企業版ふるさと納税を利用することで、寄付額の最大9割(3割が損金、6割が控除)が税負担軽減されます。キャッシュフローの面ではマイナス額は変わりませんが、本来税金として支払わざるをえない資金を、ふるさと納税を通して別の用途で活用することができます。

2. 社会貢献・PR/CSR活動:地域活性化や地方創生に関するプロジェクトに寄付することにより、間接的な社会貢献・ブランドイメージの向上が期待できます。加えて、商品の売上の一部を特定の事業プロジェクトにふるさと納税することで、消費者が間接的にその事業プロジェクトを応援するような形にすることも可能です。顧客や投資家がこういった社会活動に関心を持っていることも多く、それらの層に本来税金として支払われる資金でアピールすることができます。

3. 地域との連携強化:企業と自治体が協力して地域活性化や地方創生を支援することで、両者間のパートナーシップを構築することができます。例えば企業が新規事業を立ち上げる上でその自治体をモデルケースとしたり、自治体側が事業プロジェクトに関する知見やノウハウを得たいときに企業に相談したりといった関係性が望めます。
 また、その地域が企業ゆかりの地である場合、環境整備事業や地域資源の保全などその土地に恩返しするような地方創生支援も可能です。

4. CSR活動・SDGsへの取組:地域活性化や地方創生に関するプロジェクトを通じて、企業はCSR活動やSDGsに対する取り組みを強化できます。例えば林業では、循環型森林経営によるゼロカーボンプロジェクトなどに参画することで間接的にCO2削減を企業として取り組むことができます。

5. マッチングサポート:企業版ふるさと納税には企業と地域事業のマッチングをサポートするプラットフォームやアドバイザー制度が利用できるため、地方自治体との連携を強めたい際に制度を利用した効果的な連携が期待できます。地方創生の事業プロジェクトは多岐にわたるため、企業側のリサーチコストを下げる他、自治体側としてもマッチした企業へのアプローチをプラットフォームを通して期待することができます。

○ 企業版ふるさと納税のデメリット

1. 返礼品のない制度:個人版ふるさと納税と異なり、企業版ふるさと納税では返礼品がなく、経済的な利益を受け取ることができません。支援した金額の9割は損金算入及び控除できますが1割は持ち出しになるため、税金として全額支払うより1割の資金が流出します。地方創生プロジェクトに参画することで得られるメリットを企業が活用できるかは、あくまで企業自身に掛かっています。

2. 寄付額の制限:企業版ふるさと納税額には上限があり、法人税全額を寄付するような運用はできません。上限は諸法人税額の絶対値の割合で決まるため、プロジェクトによっては中小企業だと満足な支援を行えない可能性があります。また、下限として10万円が定められています。

3. 本社所在地への寄付制限:企業は本社所在地の自治体への寄付ができず、創業地やゆかりのある地域への支援が基本となります。そのため、ある程度歴史があり一度以上の移転を経ている企業や、本社所在地以外の営業拠点を持つ一定の規模の会社でなければ充分なメリットを享受できないケースがあります。

4. 資金のロック:法人税その他税金は必ず期間が定められたキャッシュフローですが、企業版ふるさと納税においては事業プロジェクトがどう進行し、どのタイミングで寄付金を支払うかがやや不透明です。そのため、一時的に寄付金として予定されている資金をロックする必要があり、キャッシュフローに影響を与える可能性があります。

○ まとめ

 企業版ふるさと納税は、地域活性化と地方創生を目指す企業にとって、多くのメリットを提供する制度です。税負担の軽減、PR/CSR活動の展開、地域との連携強化、CSR活動・SDGsへの取り組み強化、そしてマッチングサポートなど、利点は数多くあります。しかし、返礼品がない制度であることや、寄付額に制限があること、また本社所在地への寄付ができないことなど、デメリットも存在します。総じて、企業版ふるさと納税は、企業と地方自治体が協力して地域の発展を支える有益な制度であり、多くの企業にとって魅力的な選択肢となっています。制度の活用により、企業は地域と共に成長し、地方創生や地域活性化に貢献できます。今後も、この制度を活用して地域と企業が共に発展するような取り組みが増えることが期待されます。

企業版ふるさと納税のメリット・デメリット
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